岐阜県土岐市で生まれた世界初のあるもの。それは「脱プラ」需要に応えるユニークなストロー。
陶器や磁器でつくった「美濃焼ストロー」の誕生までは苦難の連続だったようです。
岐阜県土岐市にある飲食店「カフェ・リアン」を訪れると。
「お待たせしました、モーニングです」(店員)
充実した内容のモーニングには、よく見ると箸袋が2つ。

「箸袋に入っているものはなんですか?」(記者)
「“美濃焼のストロー”なんです」(カフェ・リアン 加藤孝平店長)
世界で初めてという陶器で作られた「美濃焼ストロー」。一般的なプラスチックのものより、すこし飲み口が厚いでしょうか。

この美濃焼ストローのセールスポイントは、温度の伝わりやすさだといいます。
「ストロー自体が冷たくなっているので、口に入れたときにひんやりしていてとても飲みやすいです」(記者)

陶器には、熱を伝えやすい性質があるため、冷たい物をより冷たく味わえるといいます。
店内にいる客に美濃焼ストローについて聞いてみると…
「口当たりがなめらかなので、余計おいしさが伝わると思います」
「自分は結構好きですね」(客)
「今年に入ってから、環境問題が非常に問題になっていまして、(プラスチック製)ストローを廃止しようかなと思ってましたけど、『陶器のストローを開発したから一度使ってみませんか?』という話がきたんです」(カフェ・リアン 加藤孝平店長)

私たちの生活から出るプラスチックゴミが海を汚し生き物の命を脅かしている、いわゆる“プラゴミ”の問題。使い捨てから繰り返し使えるものへ切り替える「脱プラ」の動きが注目されています。
この流れに陶器製のストローで打って出ようというのが、美濃焼の産地・岐阜県土岐市です。陶器製のストローを開発した土岐市立陶磁器試験場に伺ってみると。

「プラスチックに代わる素材として、金属とか紙とか植物の茎とかはあるんですけど、(ストローを) 焼き物で作った例はなかったものですから」(安江大主任研究員)
世界初への挑戦で美濃焼の魅力をアピールする狙い。しかし、開発は苦難の連続でした。

「釉薬(ゆうやく)が内側に詰まってしまって、上手に焼くことができなかった」(安江大主任研究員)
ドロドロの、この釉薬(ゆうやく)をきちんと中にまで通さないと、ストローに必要な防水性を持たせることができません。

ただ、こんな細い筒に薬を塗るのは初めて。結局、理科の実験などに使う水差しでなんとかクリアしました。
これで一安心と焼いてみると、今度は…
「釉薬(ゆうやく)で、本体と台座がくっついてしまっていました」(安江大主任研究員)

本来、陶器を焼くときは、窯の床に接する部分には釉薬(ゆうやく)は塗らないもの。ただ、ストローの場合は、薬を塗らないわけにもいきません。
どうしたら、うまく焼くことが出来るのか。まず試したのが…
「貝を土台にして焼いてみました」(安江大主任研究員)

釉薬(ゆうやく)がくっつきにくい、貝殻を台座にする方法。しかし…
「貝殻の跡が強くつき過ぎて、見た目がすごく悪くなった」(安江大主任研究員)
その後も、ストローそのものの形から、薬の量、台座の形までさまざま試しますが、どうにもうまくいきません。
悩み続けること3か月。辿り着いたのが三角形の台座でした。

「可能な限り先を尖らせて、接地する面積を極力減らしたもの」(安江大主任研究員)
ここに、薄く釉薬(ゆうやく)を塗ったストローを置いて焼くと、見事、成功したのです。
「うれしかったです これで人に見せられるかなと」(安江大主任研究員)
こうして出来上がった美濃焼のストロー。

陶器だけでなく、磁器でもつくりました。
これで新たな魅力は伝わるのか。土岐市で開かれた見本市「美濃焼ニューコレクション土岐2019」での、来場者たちの反応は。

「話題性は絶対呼びますよね」(バイヤー)
「なるべく早めですよね」(土岐市立陶磁器試験場 安江大主任研究員)
「今です」(バイヤー)
「いくつから(注文できる?)」(バイヤー)
「ロットが1日数十本から100本」(土岐市立陶磁器試験場 安江大主任研究員)
興味を示す人が続々と現れました。
「プレゼント、ギフトにいいと思う」
「陶器業界ではヒット商品がないので、海外の方へ進めていきたいな 」(バイヤー)
伝統産業が見せる、環境問題への取り組み。
土岐市は地元のメーカーと協力してこのストローを広げたい考えです。
中京テレビNEWS
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