中秋の名月の日にだけ許される、子どもたちの“泥棒”。江戸時代ごろから続く「お月見泥棒」という伝統行事で、三重県では、桑名市など一部の地域に残っています。
「お月見泥棒」とはいったいどんな行事なのでしょうか。取材班は、三重県桑名市に向かいました。
9月24日、中秋の名月の日に住宅街を歩く子どもたち。
すると突然、民家の敷地に侵入。置いてあったものを、かばんの中に入れます。
子どもたちが勝手に泥棒みたいにとってかばんの中に入れたのは、お菓子です。
この“泥棒”は、この地域で、中秋の名月の日にだけ、許されることだそうです。
中秋の名月の日にだけ、許される、子どもたちの“泥棒”
民家に置いてあったお菓子の横には、「おつきみどろぼう おひとつ どうぞ」というメッセージ。
「お月見泥棒は、年に一回、いろんな家を回ってお菓子をもらう行事」(女の子)
中秋の名月の夜に子どもたちが民家やお店を回り、お菓子などをもらうこの行事は、「お月見泥棒」と呼ばれる伝統的なもので、三重県では、桑名市など一部の地域だけに残っているといいます。
では、このお月見泥棒。その由来とは?
「江戸時代ごろから、子どもがお月見の晩に、縁側などに供えられたお月見団子をとって帰っていた」(民俗学者 神崎宣武さん)
当時、この地域で子どもは、お月様のお使いと考えられており、子どもに月見団子をこっそりとられるのは、縁起が良いとされていたことから始まった風習だといいます。
「お月見ください」(子どもたち)
現在では民家の人に一言断ってから、お菓子をもらうように変わっていますが、家の中の人が小さな泥棒たちに気付かないふりをするのは、昔と変わらないそうです。
お月見泥棒の、約1週間前。三重県桑名市内の駄菓子店「おかしの里 もりや 桑名店」をのぞいてみると、ハロウィーンコーナーの奥には、お月見泥棒の特設コーナーが設置されていました。
年に一度の大イベントの準備に、お母さんたちも力が入るようです。
「100袋ぐらいいつも用意する。今年も用意しようかなと思う」(買い物に来たお母さん)
「多い人だと2~3万円で、ごっそり買っていく人がいます」(おかしの里 もりや 川口裕隆さん)
一方、三重県朝日町のお月見泥棒は、桑名市と少し違っています。
子どもたちのために用意されるのは、お菓子と“里芋”。
「この辺では芋名月っていう里芋がとれる地域だから、里芋をお月見に供えると子どもたちが来て、腰かけて、食べて、帰っていく」(朝日町の人)
かつては、三重県だけでなく、全国各地で行われていたという、お月見泥棒。少子化などに伴い、実施する地域は段々少なくなり、現在東海地方では桑名市などの一部の地域でのみ行われているといいます。
子どもたちの大好きな、お月見泥棒。
桑名市の小学生たちが近所の家々を回った後、向かったのは、地元のコンビニエンスストアです。
「店員さん、店員さん。お月見ってありますか?」(女の子)
「少々お待ちくださいね」(店員)
このお店でも、お菓子を準備していました。しかも、タダ。地域が一体となる伝統行事を、みんなで協力しあい、守っているのです。
「こういうしきたりがあるということを聞いて、子どもたちが
来たら渡す。うれしいでしょうね」(店員)
約2時間かけてお菓子を集めた、小学6年生たち。小学校卒業と共に、お月見泥棒も今回で最後だそうです。
「中学校になったら離れ離れになる子もいるから、これが最後の機会だなと」(小学6年生 女の子)
「最後だし、楽しかったなと思いました」(小学6年生 女の子)
ちなみに、こちらの4人の今回の成果は、お菓子合わせて200個以上。約1か月間かけて、お菓子を食べてみんなで楽しむということです。
中京テレビNEWS
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